「薬物犯罪」に関するお役立ち情報
覚醒剤に関する刑事事件の流れ
1 覚醒剤に関する刑事事件の流れ
覚醒剤取締法などの法律により、覚醒剤を輸入、輸出、製造、譲渡、譲受、所持、使用等をすることは処罰の対象になります。
これから、自己使用目的の覚醒剤の所持や使用事件を例にして、覚醒剤に関する刑事事件の流れについて説明していきます。
2 逮捕から公判請求まで
自己使用目的の覚醒剤の所持や使用であっても、10年以下の懲役刑という重い刑罰が規定されています。
実際にも、覚醒剤の所持や使用の事件が発覚すれば、被疑者は証拠隠滅及び逃亡のおそれがあるとして、逮捕・勾留されることが通常です。
また、被疑者は、勾留されることが決定すると、10日間、身柄拘束されます。
そして、被疑者は、最長で10日間、勾留が延長されることがあるため、合計して最長20日間勾留されます。
被疑者が勾留されている間に、捜査機関は必要な捜査を行います。
覚醒剤の所持や使用の事件の捜査では、覚醒剤の所持や使用の事実の他にも、覚醒剤を所持・使用するに至った経緯、覚醒剤の入手元との関係、覚醒剤を繰り返し使用した状況等について、取調べ等の捜査が行われます。
捜査の結果を踏まえて、検察官が被疑者を公判請求するか、不起訴処分とするかを判断します。
覚醒剤の所持や使用の事件の被疑者は、前科がなかったとしても、その多くが公判請求されています。
3 公判請求から結審まで
覚醒剤の所持や使用の事件の被疑者が勾留中に公判請求されると、引き続き被告人として勾留されるため、身柄拘束が続きます。
もっとも、公判請求された後は保釈を請求することができます。
保釈の請求に対し、裁判官により保釈が決定され、かつ、裁判官が決定した保釈保証金を納めれば、被告人の身柄拘束は解かれます。
公判請求されてからおおむね1か月から2か月程度後に、第1回の公判期日が設定されます。
自己使用目的の覚醒剤の所持や使用の事件では、被告人が事実を認め、事実関係に争いがなければ、第1回公判期日で結審し、裁判手続が終わることが多いです。
事実関係に争いがない場合でも、弁護人は、裁判手続の中で、被告人が反省していることや、今後覚醒剤と縁を切ることを誓っていることなど、被告人に有利な事情を主張します。
4 判決言渡し
裁判手続が終われば、判決が言い渡されます。
判決は、裁判手続が終わって即日言い渡される場合もあれば、判決期日を設定してその日に言い渡される場合もあり、言い渡しがいつになるかは裁判官の判断によります。
自己使用目的の覚醒剤の所持や使用の事件で、被告人が事実を認めて、事実関係に争いがなく、被告人に前科がないならば、全部執行猶予付きの判決が言い渡されることが多いです。
全部執行猶予付きの判決が言い渡されると、被告人が身柄拘束中であれば釈放されます。
なお、被告人に覚醒剤の所持や使用等の前科があれば、実刑判決が言い渡される場合がありますが、その場合でも、懲役刑の一部の執行が猶予される、いわゆる一部執行猶予判決が言い渡されることがあります。
執行猶予判決が言い渡される場合、その期間中に保護観察所から指導監督を受ける保護観察を付されることもあります。
判決言渡しの日から14日以内に控訴がなければ、被告人が言渡しを受けた判決が確定します。