「実刑・執行猶予・罰金・前科等」に関するお役立ち情報
執行猶予が認められる基準
1 執行猶予とその要件
刑の言渡しにおいて、実刑判決の言渡しを受けた場合、確定すれば懲役、禁錮、罰金等の刑を受けることになります。
一方、執行猶予判決の言渡しを受けた場合、刑の執行は一定期間猶予され、その期間を無事経過すれば、懲役等の刑を受けることがなくなります。
ただし、執行猶予は、あくまでも刑の執行が猶予されたに過ぎず、無罪とは異なります。
執行猶予の判決を受けても前科として残りますし、また、猶予の期間中にさらに罪を犯して禁錮以上の刑に処せられるなどすれば、執行猶予が取り消されて懲役等の刑を受けなければならなくなります。
執行猶予について、法律上、刑の全部の執行を猶予する全部執行猶予と、刑の一部の執行を猶予する一部執行猶予が定められています。
⑴ 初回の全部執行猶予
①ア 前に禁錮以降の刑に処せられたことがないこと
イ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の執行を終わった日又はその執行の免除の日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと
のいずれかの場合において、
②3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき、
情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、刑の全部執行猶予が認められます。
⑵ 再度の全部執行猶予
① 以前、執行猶予付きの禁錮以上の判決に処せられたことがあっても、
② 情状に特に酌量すべきものがある場合、
③ 1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合に限り、
⑴と同様に、その刑の全部執行猶予が認められます。
その場合、認められた執行猶予の期間中は必ず保護観察に付されます。
⑶ 一部執行猶予
①ア 前に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと
イ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予されたこと
ウ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと
のいずれかの場合において、
② 犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められれば、
③ 3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けたとき、1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行猶予が認められます。
また、①にあたらない場合であっても、覚醒剤などの薬物使用等の罪を犯した場合、その刑の一部の執行猶予が認められる場合があります。
その場合、認められた執行猶予の期間中は必ず保護観察に付されます。
2 具体的な基準
刑の全部であれ、一部であれ、上記の執行猶予の要件を満たす場合であっても、必ず執行猶予が認められるとはいえません。
執行猶予の判断は、被告人ごとに、有利な事情も不利な事情も含めて、犯罪の動機・原因、手段・方法、被害の程度、社会的影響、示談の成否、被害者の心情、被告人の経歴、境遇、性格、前科の有無、反省の有無等の様々な事情から総合的にされるものであり、具体的な基準が決められているものではありません。